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「道徳教科化をめぐって~道徳教科書の中の児童文学~」第6回学習会

《2017年7月13日、日本出版会館にて開催》講師:藤田のぼる氏

 第6回学習会は、来年度から小学校で道徳が正式な「教科」として授業が行われるという事態を前に、特に道徳教科書と児童文学との関わりという視点からこの問題を考えたいということで企画されました。第4回の学習会では、フォーラム実行委員の一人、野上暁が講師を務めましたが、それに続く実行委員が講師の学習会で、長く国語教科書の編集委員を務めてきた藤田が担当。参加者は38名。

 講義の柱は「1、道徳教科化に対する基本的な問題意識」「2、1980年代の自民党などによる国語教科書「偏向」攻撃について」「3、道徳教科書の実際」。

 道徳教科書の場合、ダイジェストになってしまう問題、「徳目」によって読みの方向性が誘導されてしまうこと、そしてそれに沿った「評価」がなされてしまうことなど、国語とは段違いの弊害があり得ると指摘。

 教科書問題というと、歴史など社会科の教科書という印象がありますが、80年代初頭の「偏向」攻撃は、小学校国語教科書がターゲットとされ、「おおきなかぶ」や「かさこじぞう」などの作品に対する言いがかりのような攻撃によって、危うく作品差し替えという事態が起こったことを報告。そして、この渦中にいた古田足日氏が、その後の講演集の中で、この攻撃が子どもの「心とことばに対する攻撃」であり、文学作品の「小さいことば」を圧殺するものであると語っていることを紹介しました。これは道徳教科書と通底する問題です。

「道徳教科書の実際」については、まず「作られ方」から。8社の教科書の教材の共通点や、2社の出典について調べたところ、文科省の副読本や資料集からとられたものが、全体の4分の1から3割程度を占めていることも報告。次の「内容」では、全体のいちばん多くを占める編集委員書下ろしの道徳読み物の問題点、また児童文学作品が使われているケースの読まれ方の問題点などがあげられました。最後の「使われ方」では、道徳教科化をてこに、学校の管理体制が強化されていくことへの懸念などが語られました。

 全体として、年間の35の単元の教材がほとんど「読み物」であり、子どもたちが徳目に沿って読むことを強いられる中で、そうした「読み」が子どもたちの読書生活に影響を与えてしまうのではないか、自由に本を楽しむというところから遠ざかってしまうのではないかという危惧があるとのこと。

 この後、参加者から質問や感想、意見などが次々に出され、道徳教科化への危惧が語られるとともに、国語も含めて、諸外国では、読み物が教材としてどのように扱われているか知りたい、といった感想も出されました。

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