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Book

戦争と平和3

8月6日のこと

中川ひろたか/文 長谷川義史/絵

ハモニカブックス/発行

河出書房新社/発売 2011年

 

絵本作家の中川が、母親の原爆体験を次世代に伝えようと絵本化した作品。

当時16歳の母親が、瀬戸内海の島から広島の原爆ドームの近くにあった兵舎で衛兵をしている兄のところに毎日弁当を届けていました。8月6日、島から見た遠くの空がぴかっと光り、騒がしかった蝉の声が一瞬止まったような気がします……。

見開きいっぱいの鮮やかな青い海が、次の場面では、絵本導入部の最初の見開きと同じ構図ですが、手前の濃い緑だった島を黒く塗りたくり、対岸の山並みを残し、それ以外は空も海も真っ白で、閃光の凄まじさが表現されます。ページをめくると、アメリカ軍が落したピカドンのキノコ雲が、スクラッチされたネガフィルムのようにモノトーンで描かれ、次のページは真っ赤な場面に炭筆の太い画線の倒れた人々が散りばめられます。そして次ページはネームレスで、一面に赤黒く塗られた場面中央に、真っ黒な赤ん坊がもだえ苦しんでいるようす。さらにページをめくると、一週間後に広島をたずねたお母さんが、廃墟を前に呆然と立つ後ろ姿が描かれます。兄は一瞬にして亡くなったのでした。海の青、空の青、閃光の白、ピカドンのモノトーンの後に続く火炎の赤。場面の色を、力強い筆致で大胆に変化させながら描いた、インパクトのある絵本。(野上 暁)

広島平和記念資料館に寄贈された、2万1千点の所蔵品の中から、時計や軍手や鉄瓶、焼け焦げた弁当箱など14点を選び、広島の倉橋島から切り出した「議院石」の上に置いた写真構成による絵本。

8月6日のピカドンでそのまま時間が停止してしまったモノたちを主人公にして、詩人はまるでイタコのように巧みに言葉を紡ぎ出し、未来を失ったモノたちの無残を語らせます。ウランの核分裂が広島で起こしたことの彼方に何を読み取るか。巻末の語り部たちのプロフィールも読ませます。(野上 暁)

さがしています

アーサー・ビナード/作

岡倉禎志/写真

童心社 2012

 

イラクから日本のおともだちへ

小さな画家たちが描いた戦争の10年

佐藤真紀・堀切リエ/文

JIM-NET/協力

子どもの未来社 2013年

 

「小さな画家たちが描いた戦争の10年」とサブタイトルにあるように、2003年から始まったイラク戦争の戦時下で医療支援を続ける、JIM-NETが、現地で子どもたちに書いてもらった絵で構成した絵本です。

1991年からはじまった湾岸戦争で、アメリカ軍が使った劣化ウラン弾による放射性物質のせいで、ガンにかかった子どもたちがたくさんいます。劣化ウラン弾は、原発の燃料を作るときに出る不要なウランで作られるのですが、イラクの子どもたちが見た戦争から、示唆されるものがたくさんあります。(野上 暁)

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